近年、広報担当者でなくても組織の広報活動を強化したいと考える人が増えています。中小企業では専任の広報担当者を置く余裕がなく、総務や営業担当者が広報業務を兼任するケースも珍しくありません。また、新たに広報部門に配属された方の中には、「プレスリリースって何?」「どうやって書けばいいの?」と戸惑う人も多いでしょう。
プレスリリースは、企業や組織が自らの情報を効果的に発信し、メディアに取り上げてもらうための重要なツールです。適切に活用することで、ブランド認知度の向上、信頼性の獲得、そして最終的には事業成長につなげることができます。
本記事では、プレスリリースの基本概念から実践的な書き方、配信戦略まで、初心者でもわかりやすく解説します。読み終える頃には、効果的なプレスリリースを作成・配信できるようになることをお約束します。
プレスリリースとは?簡単に説明!
プレスリリースとは何か
プレスリリースとは、企業や組織が報道機関(メディア)に向けて発表する公式文書です。「報道発表資料」とも呼ばれ、新製品の発表、企業の重要な動向、イベントの開催など、社会的に価値のある情報を伝える役割を果たします。
プレスリリースの最大の特徴は、メディア関係者に向けて作成される点です。一般消費者向けの広告とは異なり、記者やメディア担当者が「これはニュースになるか」「読者にとって有益な情報か」という視点で判断することを前提として作成されます。
また、プレスリリースは企業とステークホルダーをつなぐ重要なツールでもあります。メディアを通じて情報が発信されることで、顧客、投資家、取引先、地域社会など、様々な関係者に同時に情報を届けることができます。この公式性と拡散力が、プレスリリースの大きな価値となっています。
発信元の多様性
プレスリリースは大企業だけのものではありません。中小企業でも積極的に活用できる情報発信手段です。実際に、地域の小さな企業が発表したプレスリリースが全国ニュースで取り上げられることもあります。
企業以外にも、慈善団体、政治団体、業界団体、研究機関など、様々な組織がプレスリリースを活用しています。慈善団体であれば社会貢献活動の報告、政治団体であれば政策提言、研究機関であれば研究成果の発表など、それぞれの目的に応じて情報発信を行っています。
このような多様な組織でプレスリリースが使われる理由は、社会的な信頼性を獲得しやすいからです。メディアを通じて情報が発信されることで、組織の活動が社会に認められ、ブランド価値の向上につながります。
プレスリリースの目的と効果
プレスリリースの主な目的は、ブランド認知度の向上です。メディアに取り上げられることで、これまで自社を知らなかった人々に情報を届けることができます。特に、新規事業の立ち上げや新製品の発表では、認知度向上が売上に直結する場合も多いでしょう。
市場での可視性向上も重要な効果の一つです。競合他社が多い業界では、定期的にプレスリリースを発信することで、業界内での存在感を示すことができます。これにより、取引先からの信頼獲得や新規顧客の開拓につながります。
信頼性の獲得は、プレスリリースの最も重要な効果かもしれません。メディアによる第三者の視点での報道は、企業の自己宣伝よりもはるかに高い信頼性を持ちます。この信頼性は、商品購買の決定要因となり、長期的なブランドイメージの向上に寄与します。
ターゲット設定
プレスリリースを作成する際に最も重要なのは、第三者に有益な情報を提供することです。社内向けの情報や、既存顧客のみが関心を持つ内容では、メディアに取り上げられる可能性は低くなります。
社会の人々が関心を持つ内容であることの重要性を理解しましょう。例えば、「社員旅行を実施しました」という内容は内輪向けの情報ですが、「地域の環境保護活動に社員全員で参加しました」という内容であれば、社会的な価値を持つ情報として受け取られます。
内輪向け情報との区別を明確にすることで、メディアに取り上げられる可能性が高まります。常に「この情報は社会にとってどのような価値があるか」という視点を持って内容を検討することが重要です。
プレスリリースの種類と具体例
プレスリリースは大きく分けて3つのカテゴリーに分類できます。
組織の動向に関するプレスリリースでは、企業の成長や変化を伝えます。事業拡大、移転、社名変更、新拠点の開設、決算発表、戦略的提携などが該当します。また、新規事業の立ち上げ、資金調達の発表も重要な内容です。時には、不祥事や製品回収に関するアナウンスも、透明性を示すために発信されます。
事業活動の紹介では、企業の商品やサービスに関する情報を発信します。新製品や改良型製品の発表、新ブランドの立ち上げ、新CMの放映開始、イベントやキャンペーンの実施、新店舗のオープンなどが含まれます。これらは直接的に売上向上につながる可能性が高い内容です。
その他の発表内容として、地域活動や社会貢献プロジェクトの実施、人事関連の報告(新役員の就任など)、受賞報告、研究成果の発表などがあります。これらは直接的な売上向上よりも、企業イメージの向上や社会的責任の履行をアピールする効果があります。
プレスリリースの書き方
プレスリリースの構成要素
効果的なプレスリリースを作成するためには、必須要素と補完要素を正しく理解し、適切に配置することが重要です。
必須要素として、まずヘッダーは文書がプレスリリースであることを明確に示します。発信元情報には発表年月日、企業名、上場企業の場合は証券コードを記載します。大見出しは30文字程度でキーワードを含むタイトルを作成し、中見出し・サマリーで補足説明を行います。リード文では基本情報と結論を簡潔にまとめ、本文では重要度順に情報を配置し、読みやすさを意識します。
補完要素として、画像は視覚的な要素として効果的で、適切なサイズに最適化することが重要です。会社概要では基本情報を網羅的に記載し、問い合わせ先はメディア向けと一般向けを分けて表記します。添付資料では詳細情報を提供し、本文では伝えきれない情報を補完します。
A4用紙1枚の原則を守ることで、簡潔性を保ちます。情報の優先順位を明確にし、詳細な情報は添付資料で補完することで、読み手の負担を軽減できます。
効果的なプレスリリースの作成方法
タイトル作成のコツでは、SEOを意識したキーワードの選定が重要です。30文字程度の文字数制限の中で、注目を集める表現方法を工夫します。具体的な数字や「初」「新」「最大」などの修飾語を効果的に使用することで、インパクトのあるタイトルを作成できます。
リード文の書き方では、5W1H(誰が、何を、いつ、どこで、なぜ、どのように)の基本情報を盛り込みます。数字を使った具体的データの活用により、信憑性を高めることができます。メディア担当者が短時間で判断できるよう、最も重要な情報を冒頭に配置することが重要です。
本文構成の原則として、重要度順の情報配置を心がけます。専門用語の使用については、一般読者の理解を考慮して判断し、必要に応じて説明を加えます。読みやすさと網羅性のバランスを保ちながら、論理的な構成を作成します。
配信戦略
送信先の選定では、プレスリリース配信サービスの活用が効果的です。関連メディアの担当部門への直接送信も重要で、事前に担当者との関係構築を行うことで、取り上げられる可能性が高まります。業界によっては記者クラブを活用することで、複数のメディアに同時に情報を届けることができます。
最適なタイミングの設定では、取引形態(BtoB/BtoC/DtoC)に応じた配信時間を考慮します。BtoB企業であれば平日の午前中、BtoC企業であれば平日の午後や週末前などが効果的です。業界特性を考慮した時期選定も重要で、決算期や業界イベントの時期を避けることで、より多くの注目を集めることができます。報道機関の都合に合わせた配信時間の調整や、情報解禁日の設定により、メディアの掲載スケジュールに合わせることが可能です。
プレスリリースとニュースリリースの違いは?
プレスリリースとニュースリリース
プレスリリースとニュースリリースは、基本的には同義語として使用されています。どちらも報道機関に向けて発信する公式文書という点では同じ意味を持ちます。
使い分けの背景として、「プレスリリース」は伝統的な報道機関(新聞、雑誌、テレビ、ラジオ)を意識した呼び方で、「ニュースリリース」はより広義のメディア(オンラインメディア、ブログ、SNSなど)を含む概念として使われる傾向があります。
現在の傾向として、多くの企業や組織では「プレスリリース」の呼称を使用しています。統一して使用することで、社内外での混乱を避けることができ、ブランディングの観点からも一貫性を保つことができます。
ニュースレターとの違い
ニュースレターは、プレスリリースとは全く異なる性質を持つ情報発信手段です。ニュースレターは記者向けの読み物として位置づけられ、新規情報がなくても定期的に配信することが可能です。
ニュースレターの内容は、導入事例や製品活用方法の紹介が中心となります。プレスリリースが「新しいニュース」を発信するのに対し、ニュースレターは「関係性の維持」や「情報提供」を目的とします。
配信のタイミングと許可範囲にも違いがあります。プレスリリースは特定の発表時点で一斉配信されますが、ニュースレターは定期的(月1回など)に配信されることが一般的です。また、ニュースレターは事前に配信許可を得た関係者にのみ送信されることが多いです。
それぞれのメリット・デメリット
プレスリリース・ニュースリリースのメリットとして、迅速かつ広範囲な情報伝達が可能です。一度の発信で複数のメディアに同時に情報を届けることができ、メディアを通じた第三者の視点での報道により、信頼性の向上が期待できます。また、メディアに取り上げられることで企業認知度が大幅に向上し、ブランド価値の向上につながります。
デメリットとして、配信タイミングの制限があります。重要な情報や時期を逃すと効果が半減する可能性があります。作成には一定のコストとリソースが必要で、専門的な知識や経験が求められます。また、配信したからといって必ずしもメディアに取り上げられる保証はなく、期待した効果が得られないリスクもあります。
ニュースレターのメリットとして、新規情報がなくても配信が可能で、メディアとの継続的な接点を維持できます。関係性の構築と維持に効果的で、長期的な信頼関係の構築につながります。
ニュースレターのデメリットとして、情報量のバランス調整が難しく、内容が薄いと読まれなくなる可能性があります。定期的な配信のため、ニュースバリューの工夫が必要で、マンネリ化を避ける創意工夫が求められます。
効果的な使い分けと継続的な広報活動
プレスリリースとニュースレターの効果的な使い分けにより、広報活動の効果を最大化できます。プレスリリースは重要な発表やニュース性の高い情報の発信に使用し、ニュースレターは関係性の維持や背景情報の提供に活用します。
月1回配信の目標設定を行うことで、継続的な情報発信が可能になります。プレスリリースは案件に応じて随時発信し、ニュースレターは定期的に配信することで、メディアとの関係性を維持できます。
長期的な広報戦略の立て方として、年間を通じた情報発信計画を策定し、季節性や業界動向を考慮したタイミングで発信することが重要です。プレスリリースとニュースレターを組み合わせることで、継続的かつ効果的な広報活動を実現できます。
よくある質問(FAQ)
Q: プレスリリースの配信タイミングはいつが最適ですか?
A: 業界や内容によって異なりますが、一般的には平日の午前中(10時~12時)が効果的です。BtoB企業の場合は火曜日から木曜日、BtoC企業の場合は月曜日や金曜日も効果的です。重要なのは、報道機関の締切スケジュールを考慮することです。
Q: 中小企業でも効果的な配信方法はありますか?
A: はい、あります。まず、地域メディアへの直接送信から始めることをお勧めします。地域新聞や地方TV局は、地元企業のニュースを積極的に取り上げる傾向があります。また、業界専門誌への配信も効果的で、専門性の高い内容であれば取り上げられる可能性が高くなります。
Q: プレスリリースの効果はどのように測定すればいいですか?
A: 効果測定には複数の指標を使用します。メディア掲載数、掲載媒体の種類、記事の内容分析、ウェブサイトへのアクセス数増加、お問い合わせ数の変化などを総合的に評価します。また、長期的な効果として、ブランド認知度の向上や売上への影響も測定対象となります。
Q: プレスリリース配信後のフォローアップは必要ですか?
A: はい、フォローアップは重要です。配信から1週間程度経過した時点で、主要メディアへの確認連絡を行います。ただし、過度な営業的アプローチは避け、追加情報の提供や質問への回答という形でのフォローアップが効果的です。
まとめ
プレスリリースは、企業や組織が社会に向けて情報を発信する重要なツールです。その本質は、メディアを通じて第三者の視点で情報を伝えることにより、高い信頼性と広範囲な情報伝達を実現することにあります。
適切な使い分けによる効果最大化を図るために、プレスリリースとニュースレターを戦略的に活用することが重要です。プレスリリースは重要な発表時に、ニュースレターは関係性維持のために使用し、両者を組み合わせることで継続的な広報活動を展開できます。
継続的な学習と改善の重要性を忘れてはいけません。メディアの動向、読者のニーズ、競合他社の動向を常に把握し、より効果的なプレスリリースを作成できるよう改善を続けることが成功の鍵となります。
読者へのアクションプランとして、まず自社の情報を整理し、どのような内容がプレスリリースに適しているかを検討してください。次に、基本的なテンプレートを作成し、実際に一つのプレスリリースを作成してみることをお勧めします。最初は完璧である必要はありません。実践を通じて徐々に改善していくことで、効果的なプレスリリースを作成できるようになります。
継続的な情報発信により、あなたの組織の認知度向上と信頼性獲得を実現し、事業成長につなげていきましょう。