「プレスリリースを出してみたいけれど、いきなり高額な費用をかけるのは不安」「無料で試せるサービスがあるなら使ってみたい」
そんな風にお考えの中小企業の社長さんも多いのではないでしょうか。
確かに、プレスリリース配信は通常1回あたり2〜3万円の費用がかかるため、効果が見えない状態で投資するのは躊躇してしまうのも当然です。プレスリリース配信は継続的に行うものなので、年間で考えると相当な費用になってしまいます。
しかし、無料のプレスリリース配信サービスには、実は大きな落とし穴があることをご存知でしょうか?安易に無料サービスを選択することで、かえって企業の信頼性を損なってしまう可能性もあります。
本記事では、プレスリリース配信を検討している中小企業の社長向けに、無料サービスの実態と賢い選び方について詳しく解説します。広報のプロに依頼する前に、まずは基本的な知識を身につけて、自社にとって最適な選択肢を見つけましょう。
無料プレスリリース配信で中小企業が知っておくべき現実

無料サービスの配信先は想像以上に限定的
多くの経営者が誤解されているのですが、無料のプレスリリース配信サービスで届く先は、実は非常に限られています。
有料サービスでは800〜1,000のメディアに配信されるのに対し、無料版では20媒体程度に留まることがほとんどです。しかも、配信タイミングも制限があり、リアルタイムではなく1日1回のまとめ配信となる場合が多いのが実情です。
この差は想像以上に大きく、例えば新商品の発表を行う場合、有料サービスであれば発表と同時に全国の主要メディアに情報が届きますが、無料サービスでは翌日のまとめ配信になってしまい、ニュースバリューを失ってしまう可能性があります。
また、無料サービスの配信先は一般的なWebメディアが中心で、業界専門誌や地方紙などの特定のターゲット層にリーチできるメディアとの提携は限定的です。つまり、本当に情報を届けたい相手に届かない可能性が高いということです。
企業の信頼性に深刻な影響を与えるリスク
無料サービスの中には、SSL化されていないサイトや、スマートフォンに対応していないプラットフォームもあります。これらのサービスを利用すると、プレスリリースを見た人に「この会社は大丈夫なのか?」という印象を与えてしまう可能性があります。
特に、BtoB企業の場合、取引先や投資家がプレスリリースをチェックすることも多いため、見た目の信頼性は非常に重要です。現代では、企業のデジタルリテラシーや情報セキュリティに対する意識も、企業評価の重要な要素となっています。
古いデザインのサイトや、セキュリティ対策が不十分なプラットフォームでプレスリリースを配信することは、「この会社はIT分野で遅れているのではないか」という懸念を抱かせてしまいます。
また、無料サービスの中には、プレスリリースと無関係な広告が表示されるものもあります。自社の真面目な企業発表の横に、全く関係のない商品の広告が表示されてしまうと、企業イメージの統一性が損なわれ、プロフェッショナルな印象を与えることができません。
配信回数の制限が戦略的な広報活動を阻む
無料プランでは、多くの場合で配信回数に制限があります。例えば「月3回まで」「累計10件まで」といった具合です。
これでは、重要な発表のタイミングで配信枠を使い切ってしまい、本当に伝えたい情報を発信できないという事態が起こりかねません。企業の広報活動は、年間を通じて戦略的に計画する必要があります。新商品の発表、決算発表、人事異動、イベント開催など、様々なタイミングで情報発信が必要になります。
しかし、配信回数に制限があると、例えば上半期で制限回数を使い切ってしまい、下半期の重要な発表ができないという状況に陥る可能性があります。さらに、緊急時の対応も困難になります。製品の不具合やサービス障害などが発生した際、迅速な情報開示が求められますが、配信回数を使い切っていると対応できません。
プレスリリース無料配信サービス大手6社の信頼性比較

PR TIMES「スタートアップチャレンジ」の実力と制約
PR TIMESは国内最大手のプレスリリース配信サービスで、上場企業の55%以上が利用している信頼性の高いプラットフォームです。
無料プランの条件:
- 会社設立から24ヶ月以内
- アカウント開設後に3人のフォロワー獲得
- 累計10件まで配信可能
PR TIMESの無料プランは条件が厳しい分、サービス品質は非常に高く設定されています。大手メディアとの提携が豊富で、朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞などの全国紙から、業界専門誌まで幅広いメディアネットワークを持っています。
専用のサポート窓口も用意されており、初めてプレスリリースを配信する企業でも、プロのアドバイスを受けながら安心して利用できます。ただし、設立年数の制限は非常に厳格で、設立から25ヶ月目に入ると即座に利用できなくなります。
また、フォロワー獲得という独特な条件があるため、PR TIMESのプラットフォーム上でのコミュニティ活動も必要になります。配信される情報の質も高く、PR TIMESに掲載されるプレスリリースは、メディア関係者からの信頼度も高いため、取材につながる可能性も他のサービスと比較して高いと言えるでしょう。
valuepress「フリーコース」の現実的な使い勝手
valuepressは中小企業の利用が多く、比較的利用しやすい無料プランを提供しています。
無料プランの条件:
- 20媒体への配信
- 利用条件の制限なし
- 1回限りの配信
valuepressの無料プランは利用条件に制限がないため、どの企業でも気軽に試すことができます。設立年数や業種、企業規模に関係なく利用できるのは大きなメリットです。また、登録から配信まで最短60分で完了できるスピード感も魅力の一つです。
しかし、配信先が20媒体に大幅に制限されることは理解しておく必要があります。有料プランでは800〜1,000媒体に配信されるため、この差は非常に大きいと言えます。また、外部提携サイトへの掲載もないため、valuepressのサイト内での掲載に留まります。
効果測定機能も提供されていないため、配信後にどの程度の反響があったのか、どのメディアが興味を示したのかといった詳細な分析を行うことは困難です。ただし、プレスリリースの配信がどのようなものかを体験するという目的であれば、十分に価値のあるサービスと言えるでしょう。
完全無料サービスの実態と隠れたリスク
PR-FREEやDirectPress!、ツナググなどの完全無料サービスも存在しますが、これらには注意が必要です。配信先が非公開で実際の効果が見えないことが多く、「多数のメディアに配信」という表現はあっても、具体的にどのメディアに配信されるのかが明記されていないケースがほとんどです。
セキュリティ面での不安も抱えており、特にSSL未対応のサービスは現代のWebセキュリティ基準を満たしていません。これは情報漏洩のリスクだけでなく、検索エンジンからの評価も低くなるため、SEO効果も期待できません。
また、ページ内に関係のない広告が表示されるサービスも多く、企業のブランドイメージに悪影響を与える可能性があります。例えば、真面目な企業発表の横に、全く関係のない商品やサービスの広告が表示されると、読み手の注意が逸れてしまい、伝えたいメッセージが効果的に届かない可能性があります。
さらに、掲載日時の指定や配信後の修正ができないサービスも多いため、重要な発表やタイムセンシティブな情報には向いていません。運営者による内容確認に時間がかかる場合もあり、緊急性の高い情報発信には対応できないのが実情です。
個人運営の無料プレスリリース配信は本当に信頼できるのか?

個人サービスの見分け方と注意点
個人が運営するプレスリリース配信サービスは、運営体制や継続性に不安があります。運営会社の法人情報が明記されているか、サービス開始からの運営期間はどの程度か、利用規約や個人情報保護方針が適切に整備されているかといった点を確認することが重要です。
個人運営のサービスでは、運営者の本名や連絡先が明記されていない場合も多く、何か問題が発生した際に責任の所在が不明確になるリスクがあります。また、運営資金が限られているため、サーバーの安定性やセキュリティ対策に十分な投資ができていない可能性もあります。
特に注意すべきは、サービスの継続性です。個人運営の場合、運営者の都合や健康状態、経済状況によって突然サービスが停止される可能性があります。過去には、個人運営のプレスリリース配信サービスが予告なく終了し、掲載されていた企業のプレスリリースが全て削除されてしまったという事例もあります。
企業イメージへの長期的な影響とリスク
個人運営のサービスを利用する場合、サービスが突然終了してしまう可能性や、セキュリティ体制の不備によるリスクが考えられます。メディア関係者の立場から考えると、個人運営のサービスから配信される情報の信頼性に疑問を持つ場合があります。
特に、大手メディアの記者は情報の出所を重視するため、信頼性の低いプラットフォームからの情報は取り上げられにくい傾向があります。また、個人運営のサービスでは、配信される情報の事前チェック体制が不十分な場合もあります。
さらに、個人運営のサービスは往々にして技術的な問題を抱えていることがあります。サイトの表示速度が遅い、モバイル対応が不十分、検索エンジンからの評価が低いといった問題は、企業のデジタルマーケティング戦略にも悪影響を与えます。
コスト削減よりも信頼性を重視すべき根本的理由
プレスリリースは企業の公式発表であり、一度配信してしまうと取り消すことはできません。短期的なコスト削減を優先して信頼性の低いサービスを選ぶよりも、長期的な企業イメージを考慮した選択が重要です。
プレスリリースは単なる情報発信ツールではなく、企業のブランディング戦略の重要な一部です。質の低いプラットフォームで配信することで、企業全体の品質や信頼性に疑問を持たれる可能性があります。例えば、取引先や投資家がプレスリリースを確認した際、配信プラットフォームの質の低さから「この会社は細部への配慮が足りないのではないか」という印象を持たれる可能性があります。
長期的な視点で考えると、信頼できるプラットフォームで継続的に情報発信を行うことで、メディア関係者との関係構築にもつながります。一方、信頼性の低いサービスを利用することで、将来的な広報活動に悪影響を与える可能性があることを理解しておく必要があります。
無料プレスリリース配信で失敗しないための3つの判断基準

1. 配信先メディアの質と透明性の徹底確認
信頼できるサービスかどうかを判断する最も重要な基準は、配信先メディアが明確に開示されているかどうかです。良いサービスでは配信先メディア一覧が公開されており、大手新聞社やテレビ局との提携があります。また、業界専門メディアとのネットワークも充実していることが多いです。
配信先メディアの質を判断する際は、単に数の多さだけでなく、自社のターゲット層が読むメディアが含まれているかを確認することが重要です。例えば、BtoB企業であれば業界専門誌や経済メディアとの提携があるか、BtoC企業であれば一般消費者向けのライフスタイルメディアとの提携があるかを確認しましょう。
また、地域性も重要な要素です。全国展開している企業であれば全国紙への配信が重要ですが、地域密着型の企業であれば地方紙や地域情報サイトとの提携が重要になります。避けるべきサービスは、配信先が「非公開」や「秘密」とされているもの、具体的なメディア名が一切明記されていないもの、「多数のメディアに配信」などの曖昧な表現のみで説明されているものです。
2. サポート体制の充実度と対応品質
初めてプレスリリースを配信する場合、サポート体制は非常に重要です。電話やチャットでの問い合わせ対応があるか、プレスリリース作成のアドバイスを受けられるか、配信後の効果測定レポートが提供されるか、トラブル時の迅速な対応体制が整っているかといった点を確認しましょう。
サポート体制を評価する際は、対応時間と対応品質の両方を確認することが重要です。平日の営業時間内のみの対応なのか、土日祝日も対応しているのか、緊急時の連絡手段は用意されているのかを確認しましょう。特に、重要な発表や緊急事態での配信を予定している場合、迅速なサポートが受けられるかどうかは非常に重要です。
無料サービスでは、サポート体制が限定的な場合が多いため、この点は特に注意深く確認する必要があります。FAQやヘルプページが充実しているか、実際に問い合わせをした際の対応品質はどうかを事前に確認しておくことをお勧めします。
3. プラットフォームの技術的信頼性と将来性
現代のビジネスにおいて、技術的な信頼性は企業の信用度に直結します。SSL化(https://)されているか、スマートフォンに対応しているか、サイトの表示速度は適切か、セキュリティ対策が明記されているかといった項目は必ずチェックしておくべきです。
技術的信頼性を判断する際は、まずサイトのセキュリティ対策から確認しましょう。SSL証明書が適切に設定されているか、個人情報の取り扱いに関するセキュリティポリシーが明記されているか、データの保存・管理体制が適切かを確認します。
また、モバイル対応も現代では必須です。スマートフォンやタブレットからでも適切に閲覧・操作できるか、レスポンシブデザインになっているかを確認しましょう。メディア関係者の多くがモバイル端末でニュースをチェックしているため、モバイル対応が不十分なプラットフォームでは、せっかく配信した情報が適切に閲覧されない可能性があります。
プレスリリース無料配信の限界を理解した上での賢い活用法

無料サービスは「学習期間」として最大限活用
無料のプレスリリース配信サービスは、本格的な広報活動の前段階として「学習期間」で利用するのが賢明です。プレスリリースの反応を測る実験として利用したり、社内での広報活動の理解を深めるために使用したり、有料サービス選択の判断材料として活用することで、効果的な運用が可能になります。
特に、広報活動を初めて行う企業にとって、無料サービスはプレスリリースの基本的な流れを理解する貴重な機会となります。配信プロセスがどのようなものか、メディアからの反応はどの程度期待できるのか、自社の情報発信力はどの程度なのかを実際に体験できます。
また、社内での合意形成にも無料サービスは有効です。経営陣や他部署に対して、「まずは無料で試してみて、効果が確認できたら本格的に取り組む」という段階的なアプローチを提案することで、予算確保や体制構築への理解を得やすくなります。
有料移行の明確なタイミングと判断基準
定期的な情報発信が必要になった場合、重要な事業発表を控えている場合、メディア掲載の実績を作りたい場合、競合他社との差別化が必要になった場合は、有料サービスへの移行を検討しましょう。無料サービスで基本的な流れを理解してから有料版に移行することで、投資対効果を最大化できます。
有料移行のタイミングを判断する具体的な指標として、月間の配信頻度が3回以上になった場合、一回の配信で複数のメディアから問い合わせが来るようになった場合、競合他社が積極的な広報活動を行っている場合などが挙げられます。
また、企業の成長段階に応じた移行タイミングも重要です。年商1億円を超えた段階、従業員数が50名を超えた段階、事業エリアが全国規模になった段階など、企業規模の拡大に合わせて広報戦略も高度化していく必要があります。
広報のプロに依頼すべき決定的な判断ポイント
年商1億円を超えて企業規模が拡大してきた場合、新商品・新サービスの本格的なマーケティングが必要な場合、資金調達や上場を視野に入れた広報戦略が必要な場合、危機管理や炎上対策を含めた総合的な広報が必要な場合は、広報のプロに依頼することをお勧めします。
プロに依頼することで、メディア関係者とのネットワーク活用、戦略的な情報発信タイミングの提案、効果測定と改善提案、リスク管理とトラブル対応といったメリットを得ることができます。
広報のプロに依頼すべき具体的な状況として、業界内での競争が激化している場合、ブランドイメージの向上が急務の場合、海外展開を視野に入れた情報発信が必要な場合、法的リスクを伴う情報の発信が必要な場合などが挙げられます。
まとめ:無料プレスリリース配信は入り口として活用し、成長に合わせてプロへ

無料のプレスリリース配信サービスは、確かに手軽に始められる魅力的な選択肢です。しかし、本格的な広報効果を期待するには限界があることも事実です。
まずは大手の無料プランで試すことから始めて、企業の成長段階に合わせてサービスレベルを上げていき、本格的な広報戦略が必要になったらプロに相談するという段階的なアプローチが賢明です。
この段階的アプローチを成功させるためには、各段階での明確な目標設定と効果測定が重要です。無料サービスでは「広報活動の基本理解」と「社内体制の構築」を、有料サービスでは「継続的な情報発信とブランディング」を、プロとの協業では「戦略的な広報活動と企業価値向上」を目標として設定しましょう。
重要なのは、無料サービスを利用する際も「とりあえず」の姿勢ではなく、将来の本格的な広報活動への投資として捉えることです。無料サービスでの経験は、有料サービス選択時の重要な判断材料となり、プロとの協業時にも貴重な資産となります。
プレスリリースは企業の顔となる重要なコミュニケーションツールです。短期的なコスト削減よりも、長期的な企業価値向上を見据えた選択をすることが、結果的に事業成長につながるでしょう。
特に中小企業の経営者の方には、広報活動を「コスト」ではなく「投資」として捉えていただきたいと思います。適切な情報発信は、顧客獲得、人材採用、資金調達、業界内での地位向上など、様々な面で企業の成長を支援します。
広報活動でお悩みの際は、まずは無料サービスで実際の反応を確認し、その結果を踏まえて専門家への相談を検討してみてください。一歩ずつ着実に進めることで、効果的な広報体制を構築することができるはずです。